『桐島、部活やめるってよ』

桐島、部活やめるってよ

桐島、部活やめるってよ

価格:1,260円(税込、送料別)

本書は第22回小説すばる新人賞受賞作で、現役の男子大学生が書いたということで評判になっていた。
ようやく読むことができた。


バレー部主将の桐島―自分にも他人にもひどく厳しい、そしてバレーも強い、とにかく出来過ぎる人物―が、急に部活を辞めた。
そのことが、彼周辺というか、彼の同級生たちの生活を揺らがせていくストーリー。
章ごとに複数の人物へ光が当てられ、話は展開していく。
どれも「桐島」の存在が大きく関わっているものの、当の桐島は登場しない。
主観を語ることはない。
その作風が変わっていて面白いのだと思う。


さて、高校生のとき私たちはどんな感じだったのか。
卒業して早6年。
本書を読みながら、登場人物たちの想いに自分自身を重ねながら、当時見ていた景色が鮮烈に甦って来る。
平たく言えば、地味な子は地味な子でかたまる、派手なグループと地味なグループは境界線が出来ている、そもそも何を共通言語として話せばいいのか分からない、などということが描かれていたが、確かにそうだった。
イケているグループとイケていないグループには、混じり合う要素など一切なく、ただただ平行に2つの線が走っているだけなのだ。


イケていない系の男子は言う。
「自分はあのキラキラしている女子たちと会話をしちゃいけないんじゃないか、って思う」と。
それほどまでに自分を卑下して暮らしていた男子たちもいたのか、と今になって驚く。


作者の朝井リョウくんの見た景色、聞いた音、それらが体現されているリアル性を持った高校生活小説。
誰もが「あった、あった」と感じてしまいそうな、強い現実感を持った本書、すごいです。
次回作も気になる新進若手作家。