『勝手にふるえてろ』

勝手にふるえてろ

勝手にふるえてろ

価格:1,200円(税込、送料別)

『夢を与える』以来、3年ぶりの著作。
帯には「恋愛、しないとだめですか?」という「うーん、恋愛ねぇ…」と何かしら自分の考えを答えたくなるキャッチが。


主人公は26歳会社員で、年齢=彼氏いない歴の女子。
彼女は遊び人ではなく確固とした考えがあるので、その年まで処女を守っているし、ハグすらされたことがなかった。
上でいう考えというのは「本当に好きな人としか、しない」というもの。
彼女の“本当に好きな人”は、中学時代の初恋の人で止まっていた――。


しかしあるとき、会社の別の部署の同期からアプローチされ「初モテ期」に入り、「初告られ経験」をゲットするのだった。
その同期は猛烈に押してきたのだが、主人公は、彼がキスしてくるときの口を「タコ…」と思って引いて逃げてしまう。
これはほんの一例で、主人公がいかに初恋の人を偶像化して崇拝し、現実で自分を好きだと言ってくれる男に興味を持っていないかが読み取れる。


相変わらず描写が繊細で、27ページの「自分で自慢をふったくせに謙遜されると、頼んでもいないのにあざやかな手つきで手品を披露された気分になる。で、隠された私のコインはどこへ行ったの?」など可笑しく、「そういう人いるいる! そして、自分勝手に見たくもないものを見せてくるんだよなぁ」と同意してしまう。
そんな「状況の置き換え」がおもしろい箇所は多々あり、つい付箋を貼るくらい、この人の文章大好き。


「読み終わった!」とtwitterでつぶやいたとき、ある人から「一言感想教えて!」と求められたときに私は「男の人って単純だね」と返した。
この本の言いたいことはそういう問題ではないだろうけど、あまり手ごわくはないシンプルな男子像が私にはここで透けて見えたのだった。


次回作が出るのは3年後くらいだろうか。
愉しみでならない。