『カリスマ 上』

カリスマ(上)

カリスマ(上)

価格:760円(税込、送料別)

母親が新興宗教を狂うほど信仰した結果、悲惨な家族の失い方をした少年・平八郎。
彼は両親を殺した「教祖」を憎み、その存在を超えることで恨みを晴らすため、自らが教祖・神郷となる。
「神の郷」という怪しいネーミングの団体を立ち上げ、どん底から這い上がりながら学んだ独学で、教徒を洗脳し、信者を増やしていく。


洗脳とは「まさに読んで字の如く」といえる言葉だ。
既存の思考スタイル・生き方をすべて洗い流し、新たな考えを脳へ植え付ける。
たとえ、強引にでも。
というより、むしろ意図的に、乱暴なほど、刷り込む。
弱っている者たちを操ることは、最初が肝心で、初期に慣れさせられた者は、教祖の言葉を信じて疑わなくなる。


神郷は、自分のことを「廃れていった別の新興宗教の、他の教祖たちとは違う」と思い込んでいる。
その差というのは、自身を「神だと思っていない」点。
単なるエロで、欲にまみれ、歪んだ心を持った、えげつない中年おやじだと理解している。
実に冷静な思考。
極端に、異常に発達した歪な発想力、ひらめき力を持っているのだけれど、内部にはまともな部分があるのだった。
それはきっと「復讐」という独特な感情を秘めて、その道に入ったが故のこと。


さて、読み進めていく中、何度も嫌な笑いが込み上げる本書。
驚くほどにふざけた発言がまるで真実であるかのように、神郷の口から次々に飛び出す。
魔法の口。
悪魔の言葉。
正常な脳を持つ人間なら信用するはずもない、突拍子もない御伽噺などを遥かに超えた、妄想力がスパークする壮大な世界が広がる。
よくもまぁこんなに…と驚き呆れる。


登場人物のキャラ的に、暗さと滑稽さが並行して続く。
上・中・下とあり、しかも上下二段に分かれた分厚さ。
ボリュームのあり過ぎる内容。