『枕女優』

頂点へ登り詰めるためなら何でもやる。
どんなに脂ぎったオッサンであろうと、策略的に身体を提供して、役を勝ち取る。
それが主人公の生き方。


強い、という単純な言葉では言い表せない。
枕をする最中は、感情を殺し、人形のようになるのだ。
汚れていくのを感じながら、涙を流すのは一人になったときと心に決めている。


本書はタイトルにあるように「権力者」に枕営業をすることで、名もないタレントから一流女優へと駆け上がる少女の姿を描いている。
非情な世界。
そして、欲望を自由に満たす男たち。
その中で生きていくには、頭を使って身体を張るしかない。


途中、色々な女の子の生活を描いた挿話が入っているのだけれど、最後になって分かった。
あれらはすべて、主人公の中に存在している、どれが本当なのか分からない自分の姿。
本当の自分を消して、役になりきるうちに、リアルと演技の境目がなくなっていくという哀しいストーリー。