『殺し合う家族』

作品の冒頭は、裁判の場面で幕を開ける。
常軌を逸した閉鎖的・独裁的な世界で生きることを余儀なくされた主人公が、被告人質問を受け、淡々と答えていく。


「狂気」にふれることを持続するうちに、人は破壊されていく。
主人公がその例だった。
理不尽で意味不明な支配、暴力を振るう男から「逃げられない日々」を送るうちに、男の前で点数を稼ぎ、自らの身を滅ぼさないようにすることばかりが頭をよぎるようになっていた。


他人を巻き込み、最終的には家族を絡めて「悲劇」は拡大していく。
悲惨過ぎる地獄が、死ぬときまで続く予感がした。


どんなに信頼し合っている関係でも、恐怖や痛みの前で、人は自分が犠牲になってまで他者を守ることはできないのか。
そういう普段考えないような疑問が生まれる。
また、こんな異常な話を著者は何をきっかけとして書くことに決めたのか、また何を目指したのか、というのも気になる。


とにかくグロテスク過ぎるので、取り扱い注意な本。