『女優仕掛人』

大手芸能プロダクションから、超弱小プロへ――。
辣腕チーフマネージャーとして、一から小百合を売れっ子女優として育て上げた上杉は、社長との考えの食い違いから、解雇を言い渡される。
「1度死んだ気持ち」で、新たな世界へ飛び込んだのだった。
そこで、彼は生き返る。
圧倒的な存在感を持った原石が、目の前にいたから。


冒頭が、その原石である千紗の枕営業シーンから始まる。
16歳の少女が、30歳以上も年上のオッサンに身体を開き、仕事を取ろうとする。
権力者の前で絶頂に達した“演技”をすることは、超一流女優を目指す貪欲な彼女には朝飯前のことだった。
声を録音したり、セックス中の映像を隠し撮りしたり…と、彼女はどこまでも末恐ろしいほどに用意周到。


これまでプロモーション下手な、無能マネージャーに付かれていたせいか、千紗は十分な仕事を与えられて来なかった。
ところが、上杉が千紗を管理するようになり、状況は一変する。
上杉にとって、千紗という女優を誰が見ても感動するような大女優にすることが夢であり、目標であり、生き甲斐となっていた。


マネージャーから女優への「片想い」と言える状態が、最も最高なマネジメントであり、成果を出せるのだという。
2人はまさにそういった関係性で、成り立っていた。


食うか食われるか。
芸能界を牛耳る大物にでも、自分を守るためなら立ち向かうかそんな無謀なことはしないか。
戦うか、その前にさっさと白旗を上げるか。
上杉は常に前者だった。


最後、これまた非情な結果が待っていて、新堂氏お得意の「どすんと闇へと落とす」情景を受け取ることができる。