『無間地獄 下』

http://d.hatena.ne.jp/ilangilang/20100405/1270479494
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闇金王・桐生は、社長の借金2300万円を背負わされた玉城を捕まえることに成功する。
しかし、彼がすこし目を離した隙に、衝撃的な出来事が起こってしまう。
桐生の部下で、彼が所属する富樫組二代目息子が、玉城を襲い、犯してしまう。
富樫はゲイだったのだ。
そして玉城は、その富樫を半死半生の目に合わせて逃亡したのだった。
しかし、富樫は自分の父親である富樫組組長へ、桐生が油断していたことを言い付けようとしない。
桐生を守ろうとする。
それは何故なのか。


逃げた玉城はというと、ある人物に助けられ、桐生たちの目をくらまし、さらに彼をぎゃふんと言わせる作戦を持ちかけられ、それに乗る。
その人物は正体を明かさないことが怪しいが、玉城にとって選択肢などなかった。
死ぬか生きるか。
どちらにしても、地獄だ。
そんな中、恐ろしいことが起こる。
桐生たちの仲間だと思われる奴らが玉城を誘拐し、彼が一番大切にしているもの―顔だ―をぐちゃぐちゃに壊す。
壊すというのは、怪我をさせるとかボコボコにするとか、そういった類のものではない。
美し過ぎた顔を、醜過ぎる顔へと整形させたのだった…。


騙し、騙されを繰り返す男たち。
桐生を転落させてやろうと奮闘する、富樫組・二代目のポストを狙う鬼塚との戦い。
危険な橋を渡りながらも、桐生は玉城を執拗に追いかけ続ける。
そのあまりにも屈折した、衝撃的な理由は最後の最後にようやく分かる。


極悪非道なことばかりしている桐生や、女誑しだった玉城はこんな人物なんだろうな、と想像しながら読んでいたけれど、どちらに関しても哀しみを湛えた人物に思えた。
憎むことなどできない。
それは、桐生の幼少時代の回想部分があまりにも惨く、そう育ってしまうのも無理はないと読者へ考えさせるから。
玉城に関しても、過去は可哀そうであるし、単に女を巧く操ってお金を稼いでいただけで、知識不足のために借金を背負わされた気の毒な男であるから。


人を愛すということ。
それは金に眩んでいた目も、利益主義な考え方も、合理主義な生き方も、すべてを放り出してしまうこともあり得る。
愛に理由なんてない。
闇金のリアル、そして顔を覆いたくなるほどの激しい暴力シーンが盛り込まれた小説が、終了間際に泣かせてくれる。


新堂氏作品を読破したい。
それくらい彼の作品は魅力に満ちている。