『吐きたいほど愛してる。』

新堂冬樹氏作品を、取り憑かれたように読み漁っている今日この頃。
本書はタイトルに「愛」があるように、恋愛モノかと思いきや、表紙のグロテスクさから予想されるように、毒々しい恋愛混じりのホラー的作品である。


4つの短編から成っていて、1話目に出てくる毒島半蔵という人物はかなり強烈な人物。
名前からして危険なニオイを感じるけれど、それだけではない。
この男、10年以上前のことを執念深く覚えていて、相手を責め立てたりする迷惑でなかなかありえない人物なのだ。
妄想に囚われ、自分のことを名前と頬にある黒子だけが欠点で、そのせいで今まで損をして生きてきたと思い込む。
そして、過去に好きだった女子を妄想で殺害するに到る。
狂気の世界が描かれている。


4話目は、実の娘に虐待される老人のストーリー。
「なんて気の毒な…」と感じてしまう描写が多々出てくるのだけれど、その原因は老人自身にすべてあると言っても過言ではない。
娘が年頃になって男の子と付き合うようになると、その男の子を「ウチの娘を汚したな」なとど言いがかりを付けてボコボコにしたり、娘を遊びに行かせないように監禁したり、ということを繰り返していたのだ。
そして、それを「愛のお仕置き」だと思いこんでいた。
最終的に、娘を毒殺するのだが、その後の態度が怖過ぎる。


読んでいる最中に、うっ…と吐きそうになることがあった。
それほど、描写が壮絶。
本当に、食事中などに読むべきではないくらい、スゴい。
ますます新堂ファンになったけれど。