『1Q84 Book 1(4月ー6月)』

青豆と天吾という2人の男女の過ごす世界が、1章ごとに交代で展開されていくストーリー。
始めのうちは、2人の関係がどのようにリンクしているのか見えてこないのだけれど、読み進めていくうちにぴったりとハマつものが見えてくる。
そして、言葉でも表現されるようになる。


青豆、というのは名字だ。
かなり変わっているけれど、青豆は生まれたときからその名前と共に生きてきた。
両親がある宗教の熱心な信者だった青豆は、子ども時分から信仰の影響をもろに受けてきた。
そこでは、様々なことが制限されたし、「異分子」とも呼べる存在であるしかなかった。
その頃、青豆と天吾は出会っていた。
そして、彼女の心には30歳を迎えた今でも、天吾が住んでて、彼との偶然の再会を望んでいた。
しかし、もし彼と巡り会ったとしても、彼女が依頼されている本業とは別の職業について語ることはない。
というのも、彼女は手を汚さない、優秀な「ゴミのような男抹殺者」だから。


天吾は、作家になりたいと望んでいる塾講師をしている青年。
長きに渡って知人である編集者から、あるとき突拍子もない依頼をされる。
それは、詐欺行為とも取れるほどのもので、ふかえりという少女が書いた作品を文章として構成を整える仕事だった。
まさに、表舞台にあっては、天吾の行動は影武者的なものとなり、何が何でも世間には秘密に行われねばならなかった。
最初は反対の気持ちを持ちつつも、その作品修正に関わっていくうちに、彼は何らかの大きな黒い世界に入り込んでいっていることを感じるようになるのだった。


青豆と私には、すこしだけ似たところがあると思った。
まっとうな恋愛を経験しない青豆。
彼女は自身の「好み」の禿げた頭をしている中年オジサンと、一夜限りの関係を時折持つことで、生活のバランスを取る。
「まっとうな恋愛をしてないよね」と友人に批判される私。
私は好きな人でなくても“恋愛ごっこ”をしたい気分のとき、恋愛モードに自分を置くことができる。
読んでいて、ひどく悲しくて泣きそうになった。


青豆は「Book 2」で、今まで以上に大変な仕事を請け負うこととなる。
それが終わると顔を変え、名前を変え、遠くへ行くことを余儀なくされる。
天吾と“偶然”出会うことは果たしてあるのか。
衝撃ばかりが詰まった本作品は、寝る間を惜しむくらいに私を惹き込んでしまった。