『冷静と情熱のあいだ(Rosso)』

これは、主人公あおいの物語。
ミラノの高級なアパートで、マーヴというアメリカ人男性と一緒に暮らしているあおい。
毎年誕生日になると、マーヴは素晴らしい贈り物を送ってくれ、ゴージャスなレストランへ連れて行ってくれる。
心から愛されていて、普段からも贅沢な生活を許され、「本の虫」のまま生きるあおいには、マーヴに隠している秘密があった。
それはかなり過去の話であったのだけれども、あおいの心から離れることのない記憶――。


阿形順正。
あおいが日本の大学へ通っていた頃、付き合っていた男。
冷静に、そして冷静さと反するようにも見えるが、情熱的に愛し合っていた相手。
当時あおいは、彼に打ち明ける前に堕胎手術をした。
それがきっかけとなり、すべてのことを理解し合えていたはずの彼と、切れた。


運命なのか、順正から何年ぶりだろうか、ミラノへ住んでいるあおいへ手紙が届いた。
手紙の存在がことの発端となり、マーヴとあおいは別れる。
マーヴはあおいが自分へ話してくれないことへ苛立ちを覚えたのだった。
本気で愛する故の不安でしかない。


あおいの30歳の誕生日に、ドゥオモに上ろう―その約束をあおいは覚えていて、当日マーヴたちとの食事をドタキャンしてドゥオモへ行く。
そこには、順正がいた。
あの頃より、シャープになった姿の彼が。


また、捨てられた。
あおいは順正とセックスした後に、そんな感想を抱いた。
順正にもあおいにも、新しい世界が始まっていたから。
もはや過去には戻れなくて、たとえ2人が再会したとしてもそれは覆されないものだった。


マーヴはでき過ぎた男で、そんな男に愛されるあおいの価値はものすごいものだと思う。
それなのに、マーヴを捨てた。
順正には、捨てられた。
10年近く忘れられない、魂を深くぶつかり合わせた男の記憶の方が、現在の大事な彼よりも、ある意味で勝っていた。


心が収縮するような、プライスレスな恋愛を、してみたい。
青ver.も早く読みたい。