『ぼくはビート』

10の短編から成り立っている。
すべて黒人男性が登場するストーリー。
彼らの肌が、本書で「黒い絹」と表現されているのが、大変きれいな言葉で印象的。


タイトルにある「ぼくはビート」には、人恋しいときに恋愛感情をまったく抜きで、男を誘う女が登場する。
一般的に、人はすぐに本命をベッドに誘ったりはしない。
それに応じる方も本気ではないし、誘う方もそうではない。
一夜限りの欠片として、消えていく瑣末な出来事と化すのが大半。
彼女は「確かに」と思わせることを言う。
「寂しい時には、使い捨てることのできる男が1番だ。相手もそれが目的で来るのだから、決して失礼にはならない筈だ。」


彼女と仲のいい女友達がいる。
彼らが連れ立って外出しない理由がある。
それは、お互いが興味を持ち合っているので、それぞれが違う経験をして、それぞれに共有するネタを作りたいと心底思っているから、らしい。
私も、女友達との月1定例の会で、何かしら話題性のあるネタを提供したいと思っている。
そのため、そして自分の中での経験作りのため、に行動しているような気がする。


相変わらず、エレガントな衣ずれの音が聞こえてくるような描写で、とにかく美しいストーリーばかりであった。
恋愛に対して、前向きになれる珠玉の小説。