『ゆうべ、もう恋なんかしないと誓った』

恋愛のショート・ショート。
「愛される女」に出てくる繭子は、女らしくすること―メークやお洒落、振舞い―が苦手で、30歳を越えるまで恋愛とも無縁だった。
周りからも、色気ゼロと思われていた。
それでも、恋は偶然やってきたのだった。
生まれて初めて会社の後輩に告白され、付き合うこととなった。
それから繭子は劇的な変化を遂げていく。
「そのままの、飾らない君が好き」と言われていたのに、メイクも服も髪形も、すべてを変え始めた。
「連れて歩いて恥ずかしくない女にならなきゃ」「周りに羨ましがられるようないい女にならなきゃ」という気持ちが渦巻いていたのだった。
しかし、それが度を越し、遂に彼は離れていく。
これまで、「女」を意識したことのなかった女が、急にそればかりに拘り始めた末の、哀しい結末。


「彼のために〜する」という押しつけがましさ。
これが、小説の中の彼に、重く感じられたのだと思う。
男に「ああ重たい、こいつの感情や行為が」とうっとうしく思われると、おしまいだ。
うざいものからは、離れていく。
当然のことだけど、恋愛にのめり込んでいる間は分からない人が多いのだ。