『沈まぬ太陽』

↑本全部欲しいな。

1985年に起きた日航機墜落事故と、企業内部の不条理に翻弄される1人の男の人生を描いた作品。
この作品は、何度も映画化が見送られてきたという。
残酷な場面が出てくることから、映像化が困難と言われてきたからだった。
しかし、今回映画化されてよかったと思う。
知らなかった歴史を1つ知ることができたから。


渡辺謙演じる恩地は、国民航空で労働組合委員長を務め、組合を先導していた。
会社のため、みんなのために、闘っていた。
しかし、そんな恩地の思いを欺く出来事が起こる。
なんと、懲罰人事として、海外の僻地勤務を任命される。
2年という約束は何度も破られ、結局9年も海外をたらい回しにされる。
一時的に、家族はバラバラとなり、娘には「お父さんは勝手。家族よりも仕事が大事なんだね」と非難された。


ようやく日本へ戻ってきた恩地だが、未曾有の大事故が起こってしまった。
国民航空ジャンボ機が墜落、乗客500人以上のうちほぼ99%以上が死亡するという大惨事となってしまう。
毎日恩地は、彼らに心から謝罪し、自分にできることは何があるだろうかと真剣に考えていた。


組合委員長時代の盟友、行天はエリート街道をひた走っていた。
行天は恩地を色々な形で裏切る。
自分の出世のためなら、どんなことにでも手を染めた。


あるとき、国民航空の会長が交代することとなった。
「お国のため」と願われて就任することになった、関西紡績会長の国見。
彼は、国民航空の「膿」を出し、徹底的に「安全・安心」を追い求めようとする。
恩地は社長室入室を任命される。


自分が美味い汁を吸うために、散々卑劣な手を使う。
邪魔をする(それがたとえ正義であっても)者は、ひどい手段を講じてでも、遠くへ追いやろうとする。
そういう実態が、巨大企業の中にあり、最終的には政界という巨大な組織とも絡み合うこととなると知り、茫然とした。
正しいことを主張して、何が悪いのか。
間違ったことをしていないのに、どうしてダメージを与えられるのか。
会社という組織に「巻き込まれる」とは、決していいことではないと思えた。


それにしても最後のシーン、泣かせてくれる。
美しい音楽と合わさって、最強になる。
自然の壮大さを見ていると、なんと自分の悩みはちっぽけでくだらないことなのだろうと。