『Loveless 22』

彼と過ごす時間は好き。
だけど、言葉を交えずに時と空間を共有している方がいい。
男との間に大きな亀裂ができたとき、彼女はそのことを発見したのだった。


同じようなことを感じたことがある。
彼と何を話してたんだろう。
私たち2人の話に中身などなくて、ただ単に彼が近くにいるだけで、私たちは完結していた。
それだけの関係で。
言葉で時間をつないでいくことができなかった、ともいえる。
この本の主人公も私も、空っぽな付き合いをしていたんじゃないかって思えた。


2度と彼の部屋に、私が存在することはない。
一生見ることのない、あの心地よい場所。
彼女は「彼と関わり合うこと」が、今後一切ないであろうことを強く意識する。


最初はぼんやりして、「ああ終わったんだ」と泣いたり、困惑したりする。
その後、現実的な事柄に目を向けるようになっていく。
あたりまえのように行っていた彼の家。
そこへのルートは断ち切られる。
もともと、そんな家など行ったこともなかったかのように。
位置すら、知らなかったかのように。
いつか一時的にではあっても、記憶からこぼれ落ちるまでは、自分の脳と心にあり続ける彼と私との思い出。


1つのスピーディな恋と呼べるのか、呼べるに到らないのか微妙な恋が、進行していく様子が描かれている。
まだ好きなのに。
マイナスな言葉で書くならば「もういいや」と自分を大事にしなくなる―その気持ちに共感してしまう本である。