『息がとまるほど』

唯川さんの小説は、情景がとても想像しやすい。
自分の身に起こることとして、容易に連想できるのだ。
そこが素晴らしい。


働く大人の女子であれば、誰もに身近なキーワード―お局、腰掛OL、不倫、浮気、結婚―が溢れている。
どこにでもありそうな話。
ちょっと興味がある話。
すこしだけ「悪」が入り混じったネタは、つまんでみたいと思ってしまいがちなものだ。


8編の短編の中で『ささやかな誤算』が、個人的に1番好きだ。
銀座にあるクラブに、ひょんなことから、いかにも水商売に不向きな「地味女子」が入店してくる。
小説にはよくある話。
普通のキャバやクラブで、そういうパターンはないに等しいけれど。
その女が曲者だった。
得体の知れないものには、何かしら怪しいワケがある。
それを痛感させてくれるストーリー。