『逮捕されるまで』
 【送料無料】逮捕されるまで |
リンゼイさん殺人事件の市橋達也被告による、逮捕される瞬間までを綴った逃亡手記。
よくここまで当時の景色とか思考を鮮明に記憶しているものだと感じた。
たとえつくり話が途中混ぜられていたとしても、文章力がかなりあるものだし、人を引き込む。
一気に強い力で、彼の見ていた世界へ連れて行かれる。
短く、散文調子で、時に幼い口調にもなるのだけれど、そんなことは無関係だ。
表紙、本文中にある絵も彼が描いたもの。
なかなか多くの人は描けないような、細かい筆致の特徴のある絵。
プロのイラストレーターが描いたんじゃないか、というレベルにも見える。
才能がある人間。
勿体ない。
「逃亡者の気持ち」が手に取るように伝わってきた。
常に逃げていた市橋被告。
“本能”や“直感”で「ここに居たらヤバい」ということを
察知し、逃亡し続けたという。
いくつもの飯場を回り、黙々と働き続けたことが詳細に描写されていたのが印象的だった。
働いたことのない彼が。
リンゼイさんへのお詫びの気持ちも、ところどころに渡って出て来ているが、彼の心の深層は読み取れないなと思う。
こんな形で、世に出る作品を描いたことが惜しい。
彼について、人間的な意味での興味を持たされてしまった本。
