『ユダ』

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伝説のキャバ嬢・立花胡桃さんのディープな、現役8年間を描いた作品。
ほぼノンフィクションに近いと思う。
春日部市で生まれ、18歳の頃スカウトされ大宮で働き始める。
それから胡桃さんは短期間で何度も店を移る。
ナンバー1を取り続けて働きやすい環境にしているのに、流れる水のように移り変わっていく。


ナンバー1を取ることは目的であるが、最終的な、その表面的な目標の奥にあるゴールは違う。
男と金に復讐することが、彼女の終着駅だったから…。


読んでいてかなりのリアリティがある。
体験した人にしか描けない枕営業の場面が生々しい。
お遊び感覚、お小遣い稼ぎ感覚でキャバをやる人は結構いるけれど、ここまで骨の髄までどっぷりと浸かり、不動の1位を築き上げた人は他にいないだろう。
有名店の有名嬢ならサイトを見たり、歌舞伎を歩けば把握できるけれど、自分の壮絶な半生を創作力をもって“小説”にしたキャバ嬢なんていない。
そういう点で、胡桃さんを尊敬する。


ダメ男を許す、常に誰かが隣に居れば精神が落ち着く、ダメ男を待つ、騙されて心身共に傷付く…そういった負のスパイラルを繰り返し、胡桃さんは生きてきた。
矛盾しているようだが、強く、儚く――。


「歌舞伎町の10年」をリアルに読める本でもある。
胡桃さんには、他にもたくさん本を書いてほしいと思う。