『KAGEROU』

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価格:1,470円(税込、送料別)

水嶋ヒロさんがポプラ社小説大賞を受賞した話題の小説を読んでみた。
発売当日に買いに行くと、平積みされていたのがかなりすかすかの状態になっていたほどの人気ぶり。
発売前から40万部突破だったとか。


内容は、自殺しようとした男・大東が、臓器移植のドナー・レシピエントとを結ぶエージェント・京谷と出会い、自ら命を絶つことへの考えを変えていくというもの。
描写的に、京谷自身のモデルはヒロさん自身ではないだろうか。


このまま生きていてもいいことはない、と絶望してしまうほど憂鬱な人生を過ごしていた大東は自殺を決意し、ビルの屋上から飛び降りようとする。
それを見かけた京谷―策略的に―は、彼を制止し、説き伏せる。
そしてドナーになってくれるよう依頼するのだった――。


死とは何かという哲学的な問題だけではなく、死んだ後の心と身体について考えさせられる。
また、たとえば臓器を移植するとき、レシピエントの身体の一部となって機能する自分の身体は、果たして実のところ誰のものといえるのだろうかとか。
実際、所有についてはどうでもいい問題で、自主的に命を失うことってどういうことだろうかと考えることの方が重要だったりする。


毎年自殺者を3万人も出してしまう日本。
ヒロさんはその現実をメディアで見て昔から知っていて、この作品を書くに到ったそうだ。
死することと生き続けること。
或いは誰かの一部となって存在し続けること。
自分に出来ることはどちらだろうか。


“ダジャレ”が大量に出てきて、それはヒロさんのセンスなのかよく分からないけれど、重たいテーマなのに意外とからりとしたユニークさも持ち合わせた作品となっている。