『福袋』

福袋

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価格:1,365円(税込、送料別)

ごく普通の恋愛をしている(いた)ハズの人々が主役の、恋愛短編集。
「普通であること」は物足りなく思えるけれど、実は幸せなこと。
それが崩れるときになって、ようやく分かる悲しみがあったりするのだ。


離婚届を提出に行ったときの状況と、婚姻届を出しに行ったときのそれとが非常に似通っている元夫婦。
昔、同じように会社を休み、2人で同じ道を歩いたのだった。
それが今やまったく反対の書類を出して、そして本当に別れるときが来たのだった。
あの頃は信じられなかった現象。
それぞれ逆のホームで電車を待つ2人。


そこで起こるハプニング。
元夫婦の女性へ、知らない若い女性が「すぐ戻るので、ちょっとだけ見ててもらえませんか」といきなり赤ん坊を預けてきたのだった。
驚くも、そこへ赤ん坊を放り出すわけにもいかず、彼女はしばらくその子をあやす。
そうしているうちに、元夫婦の男性が逆側のホームからやって来る。
そして2人は様々な事柄を思い出すのだったが…
話と関係のない補足をすると、赤ちゃんの描写がとにかく面白いので、公衆の面前で読むと笑えて困るくらいだった。


それでも離婚届は覆ることはない。
ただ、確かに「あの頃」はあったのだった。
現実を見て、前を向いて歩き出す感覚を教えてくれる。
角田さんの小説は、面白いだけではなく、元気に笑って生きようということを示唆してくれているようだ。