『告白』

告白

告白

価格:650円(税込、送料別)

↑本

2009年に本屋大賞を受賞したとき、とても話題になったのを覚えている。
気になってはいたものの、本を一切読んでいない状態で「怖過ぎる」と評判だった映画を観に行った。


物語自体はモノクロ映画でもないというのに、白黒の世界としてしか捉えられない。
色のない場所、だった。


松たか子演じる女教師は、担任をしていたクラスの男子生徒に自分の娘を殺された。
彼女が騒がしい中学生相手に、教壇で淡々と語り出すシーンからストーリーは幕を開ける。
生徒たちの一瞬一瞬から見出せる「主張」「現実」「限定感のある動作」。
そういった見逃しがちな諸々を、非常に巧く映像で切り取っているふうに感じた。


彼女は“無邪気さを装った殺人者たち”へ、徹底的な復讐をするべく綿密に計画する。
高度な仕掛け・細工としか言い様がないのだけれど、他者を巻き込みながら、じわりじわりと彼らへ不幸の巣が巣食うように変えていく。


登場人物が順番に短編の主人公となったみたいに、または連続してはいるけれど途中で途切れたショート・ショートをつなぎ合わせたみたいにして、「告白」は進んでいく。
すべての「告白」が終わるまでに、被害者が数人出てしまう。


たとえば、憎い人間がいるとする。
誰かにその人間を傷め付けてもらうより、どういうやり方・手順で傷め付けたら、最も相手が苦しむだろうかと主体的に考えを巡らし、実行へと移していく。
そういう姿勢でいる方が何倍も、やり甲斐があるのだろうし、真に満足するのではないだろうかというのが、全体を通して読み取れたこと。
真剣に、そして冷静に「復讐業務」へ取り組む人の姿は、後ろ姿からも戦慄を覚える佇まいだ。


最初から最後まで、映像が美し過ぎる作品。
奇想天外な発想に、真剣に愕然とすることができる。
きもちいいくらいに。


1人で観に行かなくて良かった。
隣に人がいた方が落ち着く、と思える映画でもある。
原作も読んで、湊さなえ氏の思考を深堀りしたい。