『鬼子 上』

祖母の死後、鬼のように変貌を遂げてしまった息子を持つ、売れない恋愛小説家の話。
重版となる本を出せない、1日1冊すら売れない作家が、どれほど厳しい境遇なのかがよく分かる内容。


主人公の小説家・袴田は、半年ほど前から息子に暴力を振るわれ、買い出しを命じられ、ビールの銘柄が違うとまた殴られる…という歪んだ生活を送っていた。
父親が息子の「奴隷」となるのは、倒錯した世界そのもの。
袴田の目に映る息子は、悪魔であり、以前の彼ではなかった。


非情な場面は、さらに続く。
息子は自分の妹を、自分の友人たちにレイプさせる。
そして冷徹な目でそれを見つめている。
止めに入った袴田もこてんぱんにやられ、娘が犯される現場を見て涙を流すしかなかった…


娘はショックで自殺をし、妻の狂気地味た様子から、家庭が完全に崩壊したことを悟る。
それまで「情」で息子を殺さずに済んだ袴田も、ついに息子を消す決心が付き――。
下巻へと地獄は続いていく。