『ハニービターハニー』

「高校生歌人」として、2001年に話題となった加藤千恵さんの恋愛短編集。
半ばジャケ買いしたようなもので、1日でさくっと読んだ。


特に好きなのは「甘く響く」という短編。
咲子がミネに、電話の途中で「好きです」と口走るシーンがある。
そこで「なんか、こういうのは、敬語になっちゃうもんだね」と照れ笑いをするのだった。
これ、かなり同感してしまう行為。
そして、不思議な言動。


どうして、告白をするとき、人はかしこまってしまうのか。
普段、バカなことばかり言い合うような相手にでさえも。
理屈なんて、考えても出てこない。
こればかりは、敬語・丁寧語とマッチングしたワードなんだって、自然の摂理なんだって、そうとしか考えられない。
いつもそうなんだもの。


加藤千恵さんは、透明感のある作風だと思う。
ジェリービーンズのようにカラフルな色を連想させつつも、
基本的にはクリアな調子を醸し出す。
過ぎ去った「学生時代の」青春(私の青春はまだまだこれから、と思いたいの)を思い出す、ちょっぴりビターな味を含む作品集である。
「短編も書いてみよう! 長編が無理なアイデアは短編にしちゃおう!」と考え直させてくれた本。
ありがとうございます。