『はつ恋』

ツルゲーネフの名著を読んでみた。
きっかけは、年上のひとと本の話をしたときから気になっていたから。


主役の少年は、ジナイーダという侯爵令嬢を一目見て、恋に落ちる。
それは、彼にとっての“はつ恋”だった。
他の男たちをいつも侍らせているジナイーダは、少年を弄ぶ。
少年はそれでも、ジナイーダから離れようとはしない。


昔の話なので、訳文や台詞のおもしろいものが多数ある。
ジナイーダが少年の髪をむしり取る場面。
―「おや! 痛いって! じゃ、わたしは痛くないの? 痛くないっていうの?」と彼女は鸚鵡返しに言った。
こういう表現が散見されるというのは、なんと非日常で新鮮なことなのだろう。


少年の辿る運命は、残酷。
あるとき、自分の父親とジナイーダが付き合っていることを知ってしまうのだった。


そんな話が現実にあったら…。
イメージしにくいので、自分の母親と自分の彼氏又はかなり好きなメンズが付き合っている、と知ったとしよう。
普通に考えて、おかしくなりそう。
最も身近にいる親。
その親を信じられなくなることで、人間不信にも陥ってしまいそう。


残酷さと、表現の古めかしさがずしんと残ったお話だった。