『ゼロの焦点』


↑本

劇場予告で見て以来、ずっと気になっていた作品。
アカデミー賞を受賞した女優陣が、映画を盛り上げることにも注目していた。


結婚後、1週間で夫が消えた。
何も言わず、僅かな荷物だけを残して――。


妻は夫を探しに、金沢へと向かう。
そこで2人の女と出会う。
失踪した夫を真剣に探す妻の、発達した“嗅覚”が、徐々に夫と女たちを結ぶ線を見出し始めたことから伺える。


2人の女は、元売春婦。
夫は2人を助けたことがあった。
そして、1人の女と偶然再会した後、同棲をしていたのだった。
妻は、そのことをまったく知らなかった。


事件を巡って次々と起こる殺人が、異様であり残酷。
その殺戮は、過去を知られたくない女が1人で行っていたものだった…。
売春婦だった時代を、完璧に封印したかったのだ。
まるで、あれは自分ではなかったかのように。


過去を切り裂いて、現在と分裂させたくなったように見えた。
それはひどく痛々しかった。
私だったら、そんなことはしない。
あの頃を否定せず、むしろ肯定する。


愛する人のすべてを、知っていますか―これが、本作品のキャッチとなっている。
どんなに一緒にいても、相手の「歴史」のすべてを知り得ることはないだろう。
相手が何もかもを話してくれない限りは。


知らなくていいこともある。
知らなくてはならないこともある。
そして、知っておいた方がいいことも。
関係性を深くするならば、この3つが必要なのだと思った。