『菜摘ひかるの私はカメになりたい』

風俗嬢かつ作家・漫画家という多彩な才能を持っていた菜摘ひかるさんのエッセイ。

女という性を切り売りする仕事は、心身共に引き裂かれる。
そのレベルは違えど、水と風はそんな職業。
だけれども、水と風とでは女の子の纏う雰囲気やオーラが、大きく異なることを私は知っている。

菜摘さんは、買い物に過度に依存したり、迫ってくる人を誰でも受け入れてしまったり―別に悪いことをしている意識はない―、人を噛みたいという強い衝動に駆られたりしてきた。

私と彼女とは全然境遇が違うけれども「分かる分かる」と頷いてしまう部分が、数ヶ所あった。
たとえば「さんざん欲しがったものを手に入れた後、急に興味を失う」ということ。
手に入れるまでの方が、待ち遠しい。
陳腐な言葉だが、わくわくする。

幼稚なのかも知れない。
すぐに飽きるなんて、本当に欲しかったものではないのではないか。
欠けた部分を持った、大人になりきれていない私。