『空気人形』

生身の女性は「心」を持っていて面倒くさいから嫌だ。
そんな理由から空気人形を彼女にし、性欲を満たしていた男。
ある日突然、男の所有する空気人形が、人間のようになってしまった。
それは“心を持ってはいけないはずの彼女”が心を持ったということを意味する。

彼女はレンタルビデオ屋に勤める男の人に、恋をしてしまった。
「私は代用品」―彼女は今まで男に飼われてきたことを振り返り、その意識を強くする。
「あなたの望むこと、何でもやるから」ということを、自分の使命であるかのように言う。

「君と僕は同じ」という男の人の言葉をそのまま受け取り、自分と同じ空気人形だと思い込む。
そして「空気を入れる穴」があると思い、彼の身体を刺して殺してしまった。
自分と造りが同じだと信じていただけだった。

心を持つということ。
それは悲しみに出会うということ。
同時に喜びをかみしめるということ。

脇役に豪華キャストが出てくる。
ラスト15分でオダギリジョーが出てきたのに驚いた。

心があるということは、切ない。
たまに痛くて苦しくて涙が出る。
でも、それと同じくらい、思いっきり笑える瞬間があるのだ。

発見したことがある。
シャワーの場面で、髪の毛と首筋の間から、下向きの顎が映れば、それだけで深い悲しみを表していると思える。