「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」

女優を目指して上京していた和合澄伽は、父母が交通事故で亡くなったので、久しぶりに田舎へ戻ってきた。
出て行く前と同じく、妹・清深へ異様なほど冷たく、意地悪く接する姉・澄伽。
その理由は澄伽の高校時代へ遡る。

澄伽は高校時代、女優への道を反対する父親と揉めてナイフを振り回した。
そして、それを止めようとした兄(後妻の連れ子)を誤って刺してしまう。
その様子を見ていた清深は、姉の一連のその行動を漫画にして応募する。
それが見事、新人賞を受賞し、知名度のあるホラー漫画誌に掲載されることとなった。
小さい村の中で、和合家は晒しものとなった。

澄伽はその出来事を今でも執念深く恨んでいるのだった。
「あんたがあんなものを書いたから、あたしは本領を発揮できないのよ! あんたのせいよ!」と罵り続ける。
清深は反省したかと思われていたが、実は今もなお漫画を描き続けていた。

事務所から解雇通告を受けた澄伽。
なんとか状況を打開しようと、新進映画監督・小森へファンレターを書き、意外なことに返事が来た。
今度は上手く人生が進んでいくように見えたが…

***

「やっぱお姉ちゃんは、最高に面白いよ」と、後半でにやりと笑いながら口にする妹。
姉は観察され、ネタにされ続けていたのだった。
その姿に、自分のそれが重なった。
内容の軽重に違いはあれど、私も妹や母に行動を笑われ、ネタにされたことがあるから。

「あたしをネタにするつもりなら、最後まで見てなさいよ!」
ラストあたりで、澄伽が清深と取っ組み合い、押し倒して言うシーンが印象的。
きれいな空だった。

永作博美がこれまでにない役を演じていて、おもしろい。
本当に色々な役に化けるひとだ。
姉妹の確執、澄伽の兄嫁に対する態度、上京資金の貯め方など、笑いへ誘導する箇所が多々ある見応えのある作品。