「グリーン・マイル」

1930年代アメリカの、刑務所を舞台とした作品。
トム・ハンクス演じるポールは、刑務所の主任を務めている。
ある日、ジョン・コーフィという大男が送致されてきた。
彼の罪は、幼い女の子を2人殺したというもの、のはずだった。
しかし、コーフィはそんな残虐なことをした犯罪者には見えなかった。

ある日、ポールの尿毒症を治してくれた。
コーフィがポールの股間を掴み、毒素をすべて吸い取ったかのようだった。
他人の「悪」や「毒」を吸収することは、コーフィをひどく疲れさせることだが、彼はそのような奇跡的なことを続けてきたのだった。

そんな中ポールは、彼のボスの奥さんも癌をコーフィに治してもらえないだろうかと、思い立つ。
深夜に同僚と協力し、コーフィを刑務所の外へ連れ出し、治癒は成功した。

それから数日後、ポールは驚愕の真実を知る。
コーフィが不思議な力で、ポールに映像を見せたのだった。
それは、ビリーという囚人が女の子2人を殺害したのであって、ポールは彼女らを「元通り」にしようと試みただけだったのだ。
それなのに、状況から犯人だと判断され、死刑囚となった。

しかし、ポールはコーフィの死刑をやめなかった。
証明のしようがなかった。
泣きながら、コーフィを電気椅子に送った。

そのような回想シーンが、最初と最後を除いて流れる。
長くなったが、ここまでがあらすじ。

***

他の人間よりも、並外れた感受性や能力を持ち合わせていたコーフィ。
彼はずっと1人だった。

他者よりも見えるもの、受け取るものが多ければ多いほど、心身は疲弊する。
世界の中にある、通常は見なくてもいいものを、彼はいやというほど目にしてきたはずである。
見て辛くなること、衝撃を受けること、気力を失うこと…実にたくさんある。

人々の悲しみを背負い過ぎて、コーフィは生きていたくなかったのだと思う。
彼はいつも目に涙を浮かべていた。
そして、自分以外の痛みまでも、感じていた。

授かった不思議な力を、恨んだのだろうか。
いや、恨むことはなかっただろう。
いつでも彼は善人たちに限り、その力を活かして彼らを救おうとした。

生きておくべき人間を、殺してしまったという悲しみ。
そして、冤罪への怒り。
2つの暗い気持ちが交錯するが、ところどころ笑いも取り入れた素晴らしい作品だ。