『無銭優雅』

無銭優雅

無銭優雅

価格:520円(税込、送料別)

40代男女の恋愛を描いた小説。
“一級品の恋愛小説”を世に出す山田詠美さんの、わりと近年の作品。


…ほんとだ。修復されてる。この、手のかけ方、親きょうだいには出来ない。友達も出来ない。私には、男がいるんだなあ、と思う。涙が出て来る。弱っている。優しい気持で弱っている…(中略)


これ、とても「分かる分かる!」というような、それでいて深みのある文章ではないだろうか。
単なる仲の良い男友達と、自分だけの男というのはまったく異なる。
くれる優しさの分量や種類が、違っている。
こういった、本質的な文章が到るページに出て来るものだから、たくさんページの端を折り曲げてしまう。


それにしても、主役となっている40代カップルの会話や行動は実に馬鹿馬鹿しい。
そして笑える。
微笑ましい類の笑いを誘ってくる。
くだらない会話ややり取りの出来る関係が、いかに限定的で貴重で、それを見つけるのがどれほど大変なことか、それに出会えることがどれほど幸せなことか。
24年間生きてきて、感じることでもある。


アホらしく、幸福な時間。
そんな理想的な時が流れている本。