『カリスマ 下』

カリスマ(下)

カリスマ(下)

価格:800円(税込、送料別)

宗教団体「神の郷」の教祖・神郷は、宗教に狂って亡くなった母・佐代子に瓜二つな女性と出会う。
女性の名は、城山麗子。
嫉妬深く、虚勢を張ることしか能がない、見た目も中身も女の腐ったような、しがないサラリーマンの妻であるのに、麗子からは普通ではない上品さ、優美さが漂っていて、神郷はそれに驚くのだった。
そして、何としてでも麗子を手に入れようとする。
そのために、麗子を合宿へ参加させるよう導き、1週間もの長期間、みっちり洗脳するのだった。
自分しか見えないように――。


1週間後、自宅は戻った麗子は変わり果てていた。
夫の城山は、まったく別人になったかのような妻の姿・言動を目の当たりにして、開いた口がふさがらない状態だった。
美しかった妻は、そこにはいなかった。
ただ、夜叉の如く髪を振り乱し、目はガラス玉となった女が変わりに存在していた。


麗子は完全に洗脳されており、家庭は崩壊した。
息子の受験のことなどすっかり忘れた様子で、怪しいマントラを唱えさせたり、神の郷で学んだ栄養のない食事を摂らせたり、とおかしな日々が続いた。
城山は、麗子が元に戻るための方法を探し、脱会カウンセラーに相談へ行く。
カウンセラーが提案したのは、麗子を保護(拉致とは違うというが、拉致そのもの)し、1週間で洗脳を解くプランであった。


いくつかの問題を乗り越え、「昔の麗子」へ戻す日々が始まった。
城山は何度も“タブー”を犯してしまう。
麗子にとっての「メシア(神郷)」を馬鹿にしたり、とてつもない嫉妬心に駆られたり…。


さてそんな中、別のところで、神郷の正体を世に晒し、神の郷を崩壊させる動きが始まった。
スパイとして5年間も、神の郷で幹部をしていた瀬野が、テレビの討論番組で「決定的なネタ」を世の中へ流した。
それは教徒が見ると、衝撃を受け、洗脳が一気に解け、脱会者が続出するであろう内容だった。
瀬野のもくろみは成功する。


この後、読者への衝撃が止まらない。
皆が皆、人々の上に立とうとする「メシア」を狙っている。
まるでハイエナのようだ。
身近な人間を数年単位で利用し、上にのし上がろうとする。
自分が王になろうとする。
誰が最後に、メシアになる?
最後の最後まで、読めない展開。
そして、読後感はやはり、虚無感一色。