『鈴木いづみセカンド・コレクション3 エッセイ集Ⅰ恋愛嘘ごっこ』


「いづみ流官能的な女になる方法」がいくつか紹介されている。
肉体は整ってない方が、相手の想像力をかき立ててる。
欠落を個性だと思え。
これはパーツによっては、どうしても個性という言葉で片付けたくはないけれども、ちょっといい助言である。
次に、許可なく相手のプライバシーに踏み込まないこと。
この本は20年ほど前に書かれたものだけれども、現代にも通じている。
恋人の携帯を盗み見る人は意外といるようだが、それでは終わらないものも終わるだろう。
明らかなプライバシーではないか。
日記を読むようなものだ。
知らなくていい事柄というか、知らずにいるのが普通だという事柄もある。


読み進めていくと、ハッと目を引く文章があった。
なんと、教養は料理とセックスに現れるらしい。
それが駄目な人はどうしようもないのだとか。
おろおろしてしまった。


人生において大事なものは、感覚。
鈴木いづみは、日々様々な瞬間の中で発見する「感覚」を最も重視していた。
画像として切り取っておきたい光景、音として記録しておきたいほど素敵な声、形容し難いおかしな言葉…私の周りにも溢れている。
それらと巡り合ったときの喜びは、何物にも変え難い。


市役所を退職後、上京しモデル、ピンク女優を経て、作家として活動。
サックス奏者の阿部薫の妻でもあった。
1986年に36歳の若さで首吊り自殺したという、波乱に満ちた人生を送った鈴木いづみの、恋愛エッセイ集。
彼女は恋に生きているように見えるけれども、実は男を愛していなかったように思う。
冷静に、恋愛ごっこをしていた。
自分の中の「落ち着き払った部分」を、見直すきっかけとなる本かも知れない。